GERBERA PARTNERSブログ

社会保険|【10事例】社会保険料の回避スキーム、脱法スキームにご注意を!

2019/06/28

Q、インターネットで検索すると「社会保険料の節約」「完全合法的な●●スキーム」等の広告を出している業者を多数見かけますが、そのような方法は有効なものなのでしょうか?



 
A、社会保険制度については、その徴収方法や給付について、制度疲労や制度矛盾が見られることは現実問題として存在し、今後の国家的な重要課題と思われます。巷に溢れる各種スキームについては、「法的グレーゾーン」に属するものや、「堂々とはやるような話ではないもの」が多く、最終的には企業としての自己責任に属するものと思われます。
 

解説(公開日:2019/06/28  最終更新日:2019/06/29 )

 

最初に

 

本稿の趣旨は、以下のような方法論を推奨したり、何らかの担保をするものではありません。現実問題として存在するこうした制度的な抜け穴があることをご紹介させていただくことで、国民的な議論の深まりと公平分担の実現を願うものであります。

 

寄せられるご質問や散見される事例などから、現実的に存在していると思われるスキームをご紹介させていただきます。

 

1 賞与の月給化スキーム

【実施例】

年間で、50万円の賞与が2回支給されるとします。

通常は、それぞれの賞与に社会保険料が発生します。(賞与支払届を提出する。)

 

それを次のように月給として支給ことで、社会保険料の発生を抑制する方法です。

 例・7月に495,000円を月給に上乗せ

  ・8月から11月に1,000円を月給に上乗せ

  ・12月に495,000円を月給に上乗せ

  ・1月から6月に1,000円を月給に上乗せ

 

【解説】

月額給与としての体裁を装い、かつ算定基礎届と月額変更届を回避できるものとして、比較的人気のあるスキームでしたが、現在では通達で対策が講じられています。

 

(平成 27 年 9 月 18 日厚生労働省保険局保険課長・年金局事業管理課長連名通知)

(前略)給与規定等によりボーナス等を分割して毎月支給する場合については、通知上の「通常の報酬」(毎月支給されるもの)には含めないこととし、保険料算定に係る報酬額の算定に当たっては、1年間のボーナス等の支給額の総額を 12 で除して得た額を報酬額とする等、「賞与に係る報酬」(年間を通じ 4 回以上支給されるもの)として取扱うこととする。なお、この取扱いは平成 27 年 10 月 1 日から適用される

 

2 月次インセンティブ

【実施例】

上記1をもう少し自然に制度化したものです。

一時金を賞与として処理せずに、月次インセンティブや歩合給として月次給与として処理します。例えば、月次インセンティブとして50万円を支給するが、賞与ではなく、月給として取り扱うというイメージです。うまく支給タイミングを調整することができれば、算定基礎届と月額変更にも該当しません。

 

【解説】

賞与とは、「労働の対償として受けるすべてのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるもの」を指すとされます。イメージとしては、夏期・年末・決算月等に支給される高額な一時金(定義上、年3回以内になります。)を連想されると思います。

 

これを、月々の業績や成果に応じた「インセンティブ」「歩合給」として定義することで、賞与に該当しないように制度設計することは可能です。

 

ただし、注意点が2点あります。

(1) 月次インセンティブが支給された月については、割増賃金単価が上昇しますので、残業代が高額になります。(ただし、現実問題として、多くの事例では、割増単価の確認は行っていないことが多いです。)

 

(2) 当然のことながら4月~6月に支給された場合は、算定基礎届の対象になります。これを不自然に回避してしまいますと、脱法的な制度設計に近づいていくことになります。

 

3 個人事業主の小法人設立スキーム

【実施例】

個人事業主は原則として国民健康保険に加入することになりますが、年収が高いと国民健康保険税も高額になります。

 

例えば、小規模な法人を設立して(又はどこかの法人に形式的に勤務して)、低額の報酬を受けるような状況を創出して、そこで社会保険に加入することで、国民健康保険に加入する必要はなくなります。

 

【解説】

社会保険の適用拡大により、標準報酬月額に58,000円(1等級)が創出されたことで、さらに低額加入ができるようになり、一部で実施されていると思われます。現実に、「数万円の報酬で経営者が社会保険に加入することが可能か?」といった質問が真面目に寄せられることがあり驚いています。

もともと、サラリーマンに比較して、個人事業主は、租税や社会保険料についての様々な回避スキームが存在しており、実質的な既得権となっていたことについては、様々な意見があります。

 

現時点で明確に禁止する法令もないようですので、制度上の抜け穴と思われます。フリーランスや副業といった雇われない働き方が増えてくることで、こうした矛盾や不公正が拡大することが想定され、何らかの法令上の禁止措置が求められるところです。

 

4 報酬の一部の業務委託料化

【実施例】

実質的な月額報酬50万円の労働者に対して、給与として20万円のみを支給して、30万円は業務委託料として支給する。

 

【解説】

労働契約と業務委託契約の違いとして、指揮命令関係の有無が論点となりますが、本稿では詳細に言及しません。

 

一部の業界では、業界慣行や政治的な既得権としてこうした制度が堂々と行われており、意図的かそうでないかは別として、実質的な社会保険料回避スキームになっていることについては様々な意見があると思われます。(どの業界とは敢えて申し上げませんが、公益的セクターに近いところでこうした事例が散見されることについては、国民的な議論があってしかるべきと思います。)

 

もちろん、労働契約に基づく部分と業務委託契約に基づく部分が明確に分離できる旨の説明可能であれば誤解や指摘を受けることもないと思われますが、多くの場合は、支払元が同一であったり、実質的に区別がつかない等の状況が多いと思われ、脱法スキーム的と解釈されやすいのではないでしょうか。

 

5 二以上事業所勤務届の提出漏れ

【実施例】

法人の代表者等が、複数法人に報酬を分散させ、一部の報酬について資格取得届を提出しない。または最低額報酬の法人のみで資格取得届する等。

 

【解説】

本来、複数報酬がある場合は、全ての法人で資格取得届えを提出した上で、「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」により、全報酬を合算して社会保険料を算出することになります。

 

以前は、これを失念していたような体裁を取り、提出しないといったことが行われていた状況が散見されましたが、近年ではマイナンバーや国税情報との連携が進んできたことから、指摘される割合が高くなっているようです。

 

これも、一般的なサラリーマンと比較して報酬分散戦略を採りやすい経営層向けの制度的な抜け穴であったと言えるでしょう。富める者がますます有利になるように制度の抜け穴はできているようです。

 

6 非常勤役員

【実施例】

実質的に経営に参画している役員を非常勤扱い名目で、社会保険の加入を不要と判断する。

 

【解説】

非常勤役員については、社会保険法令上明確な定めがなく、疑義照会で対応している状況です。要は、法令上の基準が示されず個別判断になりますので、会社の立て付けによりいかようにも説明可能な、法令上のグレーゾーンとして存在している状況です。

法人内の実質的な発言力や支配関係は外形的に見えにくいところであり、名目のみで非常勤として社会保険加入を免脱されるのは、不公正であるという意見もあるでしょう。

 

(日本年金機構疑義照会)

質問:適用事業所において使用され、労務の対償として報酬を受けている役員は常勤、非常勤を問わずにすべて被保険者として扱うのか。

 

回答:労務の対償として報酬を受けている法人の代表者又は役員かどうかについては、その業務が実態において法人の経営に対する参画を内容とする経常的な労務の提供であり、かつ、その報酬が当該業務の対価として当該法人より経常的に支払いを受けるものであるかを基準に判断されたい。

 

注記:なお、基準とは以下のものを指すとされています。

(1)当該法人の事業所に定期的に出勤しているかどうか。

(2)当該法人における職以外に多くの職を兼ねていないかどうか。

(3)当該法人の役員会等に出席しているかどうか。

(4)当該法人の役員への連絡調整または職員に対する指揮監督に従事しているかどうか。

(5)当該法人において求めに応じて意見を述べる立場にとどまっていないかどうか。

(6)当該法人等より支払いを受ける報酬が社会通念上労務の内容に相応したものであって実費弁償程度の水準にとどまっていないかどうか。

 

7 「 2ヶ月の有期雇用」という名の「実質的な試用期間」

【実施例】

実質的に長期雇用が予定されている労働者を形式上「2ヶ月間の有期雇用」として取扱い、社会保険の加入手続をしない。なお当該期間は、実質的に試用期間として活用されていることが多い。

 

【解説】

社会保険では、「2か月以内の期間を定めて使用される人」「季節的業務(4か月以内)に使用される人」「臨時的事業の事業所(6か月以内)に使用される人」という加入免除要件があります。これを拡大解釈して社会保険負担を抑制するというスキームは、比較的古典的方法として存在します。

 

日本年金機構疑義照会「適用事業所と被保険者

 

とはいえ、年金事務所等の調査では発覚しやすい論点であり、あまり安定的とは言えないスキームと言えまして、どちらかと言えばセコい部類に入る脱法テクニックと言えます。

 

8 被保険者資格取得基準(4分の3基準)を下回る労働契約を締結して実質的に超過する

【実施例】

短時間アルバイトとして採用したが、現実的に正社員なみの労働実態になったにも関わらず、社会保険には加入しない。

 

【解説】

典型的な加入漏れ事例であり、スキームと呼ぶほどのものではありませんが、事例としては最も多いものです。短時間アルバイトを多用する小売業、飲食業で発生することが多く、原因としては現場の人手不足やタイトな業務内容が挙げられます。

 

意図的に脱法スキーム化する悪質事例としては、これを「4.報酬の一部を業務委託料化するスキーム」と組み合わせ、短時間アルバイトを超過する労働分については、業務委託化するとか、別法人(形式的なペーパーカンパニー等)からの出向形態を取る等のスキームがまともに議論されるような事例もあり、常識的にどのような印象を抱かれるかは言うまでもありません。

 

9 月末退職ではなく、月末日の前日で退職させる

【実施例】

月末締めの会社では、月末日退職が通例であるところ、特段の事情無く、「月末日の前日」を退職日にする。

 

【解説】

給与計算事務をしている人はご存じのとおり、「月末日に在籍している場合」には「その月の社会保険料」が発生します。(通常は翌月に控除します。)

 

退職日の前日に退職処理をすることで、当月1ヶ月分の社会保険料会社負担分を節約するというかなりセコいスキームですが、その簡便さ故に、比較的多用されています。

 

明確な法令違反ではないのですが、労働者がよく理解していない場合、退職後に退職月の健康保険料や国民年金保険料が請求され、驚くケースもしばしばです。

 

労働者が退職後に、年金事務所やハローワークに苦情を申し出たところ、ハローワークや年金事務所の担当官に知れ渡るところとなり、電話で切々と修正を促される等の事例もあります。説明不足による労働者のクレームを招いた上に、行政の手も煩わせ、再申請の作業コストも発生するという、誰にもメリットのない状況になってしまいます。

 

せめて、合理的な理由をもって15日退職とか、20日退職などであればよいと思うのですが、ギリギリ前日まで引っ張るあたりが、さらに不自然さを増幅させることになります。

 

なお、余談ですが、退職日を不自然に操作することにより、年次有給休暇を使い切れないといったトラブルも併発することもあります。

 

10 選択型確定拠出年金る

【実施例】

企業に選択型確定拠出年金を導入して、本人の希望に基づき、報酬の一部を確定拠出年金拠出金として給与として受け取らない。それにより標準報酬月額がダウンする。

 

【解説】

適法な方法で、上場企業を含む多くの企業で実施されています。厚生年金制度が揺らぐ今、従業員の自助努力による個人年金の支援をすることにもなり、労使共にメリットある制度と思われます。

余談ですが、日本で初めてこのスキームを開発して導入したのは、ユニクロ(株式会社ファーストリテイリング)と言われ、その先見性には驚かされます。

 
 

以上、10のスキームをご紹介させていただきました。

冒頭に記載のとおり、本稿の趣旨としまして、特定の推奨行為や担保を行うことはいたしません。ご質問例や事例等をもとに、特定の事例ではなく抽象化して記載していますので、個別の内容についてのご質問等についても基本的にご回答はいたしねますので、ご了承いただきたく思います。

 

社会保険制度及び立法や行政のあり方について、国民的な議論が深まり、持続的な社会保障制度の再構築と公平分担の実現を強く願うものであります。

 
 


 
 

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