2018/08/23
労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合は、平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」と定められています。
「会社から休めと言われたのだから、『休業手当』を支給すべきではないですか?」との相談が寄せられることがあるのですが、ここで注意しなければいけないのは、休業手当を支払わなければならないのは「使用者の責に帰すべき事由による休業」であり、「使用者の指示による休業」ではないことです。
労働者が仕事を休業する場合、次の3つのパターンがあります。
原則としては、②の時は、休業手当の支払義務が使用者に生じ、③の場合は「不可抗力」として生じないということになります。「使用者の責に帰すべき事由」に不可抗力は含まれないと解釈されています。
ここで問題になるのは、「不可抗力」という要素をどのように考えるかという論点です。
不可抗力とは、「休業の原因が事業の外部によるもの、かつ事業主がどんなに注意していても避けられないもの」を指します。
台風の場合(地震による事業所倒壊などもそうですが)は、自然の営みが原因であり、会社とは関係なく発生します。そしてそれは人間の力では防ぎようもありませんから不可抗力と認められ、労基法上では休業手当を支払う義務は使用者に発生しないことになります。
ただし、現実に台風被害が発生するに至らない状況で、「その可能性がある」という状況をもって休業にしてしまうと休業手当の問題が生じる可能性があります。ここが判断の悩みどころになります。
暴風が吹き荒れるなかで、使用者が「出勤して働け」などと指示して労働させ、事故が起きて労働者が死傷した場合、使用者は「安全配慮義務」違反に問われる可能性があります。現実的な企業リスク管理の観点からすれば、台風被害の可能性ありという段階で、休業の判断をすることが求められます。そのため、休業手当支給の可能性はありつつも、安全を優先して休業指示を出すという判断が求められる場面もあるということは、企業管理者として認識すべきかと思います。
労基法は最低限の基準を定めた法律であり、労使は「労働条件の向上を図るよう努めなければならない。」(労基法第1条)という趣旨があります。台風などの災害時でも、できるだけ労働者の収入に影響が出ないように制度づくりをすすめることも、福利厚生の一環と考えられます。
【実務的な対応例】以上のように、会社の実情に合わせて、様々な形態がございます。ご検討いただければと思います。
弊社では、実務的な観点から、人事労務を含め内部統制の整備をご支援させていただいております。社内規程や管理体制の整備でお悩みの場合は、お気軽に下記問い合わせフォームよりお申し付けください。