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労務管理|【改めて考える】管理監督者の制度設計に説得力を出す5つの視点

2019/05/20

Q、働き方改革で、残業が制限されているため、一般社員を定時で帰社させないといけない状況です。人事制度を改定して、管理監督者として働いてもらえる人を増やして吸収しようという意見も出ているのですが、管理監督者の制度設計上、注意すべきポイントは何でしょうか?


 

A、労務リスクの観点だけを考えれば、管理監督者を設定しない(もしくは執行役員クラスなど役員に準じる者に限定する)というのが正解となりますが、ビジネスとしては理想論に過ぎるといえるかと思います。実務的には、労働法令や行政通達に沿って、ポイントを押さえた設計をすることで、いたずらに拡大解釈と非難されないように予防措置を講じておくことが企業の人事政策として求められると考えます。

 

解説(公開日:2019/05/20 最終更新日:2019/05/10)

 

本稿においては、「管理監督者は時間外及び休日の規制や割増賃金の対象にならない」を中心に論じます。その他にも、安全衛生や健康管理上の論点、組織設計や職務権限の論点については、別途検討が必要となることにご注意ください。

 

1 管理監督者についての行政機関の基本的な立場

行政機関の基本的立場としては、「原則認めない」になります。制度設計を行う上では、この点を大前提として認識する必要があります。

 

(昭和22年9月13日発基第17号、昭和63年3月14日基発第150号)

労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者であって、労働時間、休憩及び休日に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にあるかを、職務内容、責任と権限、勤務態様及び賃金等の待遇を踏まえ、総合的に判断することとなる。

 

2 実務的に参考となる通達

 

「管理監督者の許容範囲」ということについては、行政機関としては積極的な情報提供をしません。弁護士や社会保険労務士等の専門家もリスク回避の観点から、当該論点については、明言を避け「個別具体的な検討になります」との見解が一般的です。

 

実務的には、各企業が人事制度の中で独自に運用をしていくしかないという実態があり、グレーゾーンが拡大しています。

 

そうした際に参考になる基準として、「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について(平成20年9月9日基発第0909001号)」があります。店舗系企業に関する通達ですが、労働法令は業種にかかわらず適用されることが考えますと、業界に関わらず押さえるべきポイントが含まれていると考えることができます。

 

大きく3つの観点が呈示されていますので、ご紹介させていただきます。

 

【1】事労務管理権限を有すること

「所属する労働者に係る採用、解雇、人事考課及び労働時間の管理は、店舗における労務管理に関する重要な職務である」とされ、「採用や解雇への関与」「人事考課」「労働時間管理」等の要素が例示されています。
 

人事についての最終決済自体は人事部長や管理部長などの役員クラスになることが多いと思われますが、管理監督者であるためには、こうしたプロセスに積極的に関与するように、職務権限の設定、人事評価システムの設計、勤怠管理システムの設定を行う必要があると考えられます。

 

【2】出退勤の裁量性を有すること

『管理監督者は「現実の勤務態様も、労働時間の規制になじまないような立場にある者」であることから、「勤務態様」については、遅刻、早退等に関する取扱い、労働時間に関する裁量及び部下の勤務態様との相違』があるものとされ、「遅刻、早退等の控除やペナルティが行われない」「労働時間の裁量性を失わせるような拘束的作業に従事させない」「部下と同様のマニュアル作業等に大半従事させない」等の注意点が例示されています。

 

なお、管理監督者の欠勤控除について議論がなされることが多いのですが、ノーワークノーペイの原則から欠勤の日割控除を行うこと自体は容認されるとの意見が一般的のようです。(例によって、行政機関からの明示的な解釈は出ていませんが、仮に「全欠勤)しても給与を満額支給することが法令上の要件だとすれば、債権債務のバランスから見てたいへん違和感のある結論になると思われます。)

 

【3】賃金が優遇されていること

『管理監督者の判断に当たっては「一般労働者に比し優遇措置が講じられている」などの賃金等の待遇面に留意すべきものであるが、「賃金等の待遇」については、基本給、役職手当等の優遇措置、支払われた賃金の総額及び時間単価』から検討が行われるとされ、「基本給や役職手当での優遇措置」「年収(賃金総額)水準」「実質的な時間単価水準」で判断されるとされています。

 

なお、管理監督者であっても、本人の職種や業績によって、月給レベルで一般職との逆転が発生することがあり、こうした状況の当否が議論になることがあります。もちろん望ましいことではありませんので、制度上是正すべきはした方がよいのですが、前掲通達によれば、「一年間に支払われた賃金の総額が、勤続年数、業績、専門職種等の特別の事情がないにもかかわらず、他店舗を含めた当該企業の一般労働者の賃金総額と同程度以下である場合には、管理監督者性を否定する補強要素となる。」とされていることから、例えば、逆転している部下の側に、「短期的に極めて高い業績があり賞与が多かった」とか「極めて高い技能を有しているため特定の手当が付与されていた」等の合理的な理由があれば、当該通達に即して説明可能とも言えます。

 

ただし、部下(一般職)の残業が多くて逆転されてしまったという状況については、不合理な逆転になりますから、賃金制度において何らかの代償措置が必要と言えます。(例えば、管理監督者の賞与面での優遇を行うとか、場合によっては、そのような逆転が発生しないように役職手当金額の再設定などが必要になるケースもあると思われます。)

 

以上が通達で示されている3つの観点ですが、その他にも実務上の注意点がありますので、ご紹介させていただきます。

 

【4】レポートラインのバランスや組織図上の階層

企業の人事政策は、組織図の形に落とし込まれ、関連して職務権限や内部統制の仕組みが作られていきますが、この段階で不整合が発生しないように注意すべきと考えます。

 

(1)管理監督者が多すぎてレポートラインが不自然になっている

「管理される者より管理する者が多くて指揮命令系統が成立していない。自己申請自己承認になっている。」などは笑い話になってしまいます。レポートラインを成り立たせるための常識的な人数構成のバランスに収める必要があります。

 

(2)組織上の階層が凸凹になっている

「管理監督者相当の部長職とそうでない部長職が同呼称で混在していたり」「課長職でも管理監督者になっている者がいたり、いなかったり」などの状況がありますと、職務権限に基づく合理的な基準と見えなくなってしまいます。現場都合での残業代回避ありきの制度設計にならないように注意が必要です。

 

(3)経営層には近い方がよい

前述のとおり、管理監督者は「労務管理について経営者と一体的な立場にある者」とされることが原則ですから、企業の重要な意志決定にも関与することが自然と考えられます。

「人事政策を含めた重要な経営課題が議論される経営会議、営業会議等の重要会議への参加資格を有していること」「職務権限規程上も一定の権限が付与されていること」にも気を配ることで、さらに説得力が出る制度設計になると思われます。

 

【5】労働契約としての本人の認識

現実問題として、本人が、法令上の管理監督者として処遇されていることについて労働契約としての認識を有しているかという点も大きな要素になります。名ばかり管理職訴訟の多くは、この点についての理解不足や納得不足に起因していることが大半です。

 

日本の労働慣行として、入社時のみ労働契約書を取り交わして、その後は暗黙の了解で組織の人事に従うということが一般的かと思いますが、一般職から管理監督者へ昇格するような重要な変更時は、改めて労働契約書を取り交わし、その職責や処遇をしっから説明して納得した上で就任していただくほうが、人事政策しても望ましいと考えられます。

 
 

なお、いわゆるスタッフ職について議論になることがあります。

『都市銀行等における「管理監督者」の範囲(昭和52年2月28日基発第104号の2)』や『都市銀行等以外の金融機関における「管理監督者」の範囲(昭和52年2月28日基発第105号)』によれば、「法制定当時には、あまり見られなかったいわゆるスタッフ職が、本社の企画、調査等の部門に多く配置されており、これらスタッフの企業内における処遇の程度によっては、管理監督者と同様に取扱い、法の規制外においても、これらの者の地位からして特に労働者の保護に欠けるおそれがないと考えられ、かつ、法が監督者のほかに、管理者も含めていることに着目して、一定の範囲の者については、管理監督者に含めて取扱うことが妥当であると考えられること。」とあります。

 

一定の格付けを有する「経営上の重要な事項に関する企画、立案調査等の業務を担当する者」が通達上で例示されていますので、職種に応じて上記の観点に注意しながら制度設計をすることで、実務的に対応が可能と思われますが、本稿ではその詳細は割愛させていただきます。

 

弊社では、実務的な観点から、労務管理や人材管理の整備をご支援させていただいております。人事労務管理でお悩みの場合は、お気軽に下記問い合わせフォームよりお申し付けください。

 
 
 


 
 

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