2022/12/27
A、元々の労使関係(指揮命令関係)の実態を引きずったまま、契約だけを業務委託契約に切り替えようとすると、受発注や連絡体制において、指揮命令類似のコミュニケーションが発生しやすくなり、いわゆる偽装請負と見做されるリスクがありますので注意が必要です。
本稿では、いわゆる「偽装請負」といわれる問題について、問題の所在や注意点を解説いたします。
厚生労働省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」によれば、本論点で問題になる「請負」について、次のように記載されています。
『請負とは、労働の結果としての仕事の完成を目的とするもの(民法第632条)ですが、労働者派遣との違いは、請負には、注文主と労働者との間に指揮命令関係を生じないという点にあります。』
なお、ここにいう「請負」とは、業務委託、準委任等類似の契約形態も含むものと解釈されていますので、「請負」という表現を「業務委託」や「準委任」に置き換えたとしても、同じ注意が必要です。
そして、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号、平成24年厚生労働省告示第518号)」によると、「適切な請負」について、次のような内容が示されています。
① 自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること。
(業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行う、労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行う、秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行う。)
② 請負契約により請け負つた業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること。
その上で、外形上は請負契約であっても、それが法の規定に違反することを免れるため故意に偽装されたものであつて、その事業の真の目的が労働者派遣を業として行うことにあるときは、労働者派遣法違反行為となることが示されています。ここにいう「労働者派遣を業として行う」とは、本来の労働者派遣法の規制外で、自己の雇用する労働者を、派遣先の指揮命令に服させるような形態であり、いわゆる「人貸しビジネス」のようなものを想定しています。
偽装請負問題は、元々は、工場内で他社(生産工程の受託会社)の労働者が混在勤務しているような状況で、発注者が受託会社労働者に直接的な指揮命令を行い、雇用責任を負わずに指揮命令権のみを行使する不適切な関係性として問題視されることが多いものでした。
最近になり、個人事業主やフリーランサーが会社と直接契約する形態が多くなったことで、発注者から受託事業主への指揮命令類似行為が起こりやすい環境が生まれたため、再び問題視されるようになっています。
まず大前提として、委託内容は契約書等で明確に定め、契約書に記載の無い事項を、つど指示するようなやりとりをしないことが基本になります。しかし現実問題としては、「口約束のみで契約書が作成されていないような契約」「委託業務が漠然として双方の責任範囲が明確でない契約」等が散見されます。そのような契約不明確な部分は、日々の密な連絡でやりとりをすることになり、実態として、労使関係とほぼ同じようになっている状況が散見されます。
その他、実務的な注意点は、厚生労働省より「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」が発行されていますので、具体的な疑問点などがあれば、当該ガイドが参考になります。下記にURLを記載します。
労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド(厚生労働省・都道府県労働局:PDF)
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