2019/03/18
A、多くの企業では、従業員としての適性を判断する期間として試用期間を設けられています。本採用後と比べると試用期間中は、従業員の雇用契約上の地位としては不安定です。このため、その期間を延長するには、就業規則の定めあるいは従業員本人の合意が必要とされています。また試用期間を延長する理由を従業員本人に伝えることが重要です。
多くの企業が4月に新入社員を迎えます。この時期の新入社員は、この春に高校や大学などを卒業した、いわゆる新卒者が多いのが特徴です。
そして、入社後の一定期間を「試用期間」として、その間に従業員の自社での適性を見る期間とすることが広く企業で採用されています。
今回のご質問のように、当初定めた試用期間を延ばすことは、企業側の自由に任されたものではなく一定の要件が求められます。
試用期間は、この間に自社での適性であると判定されると正式な従業員になるという、正式雇用とは分けた、「お試し雇用期間」として扱われています。
法律的には、使用者側が解約する権利を留保した期間とする考え方が一般的です。このため通常の雇用期間と比べると、従業員としては不安定な状態であると言えます。
当初決められた試用期間を延ばすということは、従業員にとっては不安定な状態がさらに続くということですから、望ましいことではありません。
このため試用期間を延長するには、就業規則や雇用契約書でその旨が規定されていることが求められます。これらの定めがない場合には、対象となる従業員との個別合意が必要です。
なお、試用期間の長さには法的な定めはありませんが、広く採用されているは6か月以下の期間です。この期間を超える場合は、裁判例でも長すぎると判断されることがあります。
一概には言えませんが、延長後の期間が6か月を超えないようにするのは望ましいようです。
試用期間を延長するには、根拠となる就業規則や雇用契約書で延長を定めた規定が必要ですが、それだけではなく延長することの理由を本人に伝えることも求められます。
例えば、入社後の急な傷病のために、試用期間に欠勤があり適性を見る十分な期間が取れなかったこと、同時に入社した他の従業員に比べて著しく仕事上の上達が見られないこと、服務規律に反する行動が見受けられることなどが上げられます。
このうち、最後の例については、就業規則等の服務規律のどの部分に反しているかを明示し、改善するように指導をすることが必要です。
試用期間は、正式な雇用とは分けた位置づけである一方で、雇用契約が結ばれている事には変わりがないため、期間を延長した後に原因となった課題が解消されなかったとしても、簡単に解雇ができるわけではありません。
その原因となった課題の重大さによって、解雇の可否が判断されるため慎重な対応が必要です。このため、安易な延長は避け、通常の試用期間中に十分な指導や教育を行うようにご留意ください。
試用期間は、自社での適性を見る重要な期間ですから、指導すべき点は積極的に指導し、改善の機会を与え、また教育についても丁寧に行うことが大切です。
特に一定の経験や能力があると期待されて採用される既卒採用者に比べて、新卒採用者には、指導と教育は欠かせないものです。従業員ごとに課題となっていることが何かを伝え、改善が見られるかを確認し、成長を促すことが求められます。
社会保険労務士法人ガルベラ・パートナーズでは、リスクに備えた就業規則や規程の作成を始めとする労務管理のご相談を承っております。どうぞお気軽にご相談ください。