GERBERA PARTNERSブログ

労務 その他|従業員がインフルエンザにかかったら?

2019/05/13

Q、飲食店を経営しています。インフルエンザやノロウィルスなど、従業員が感染症に罹患した場合、他の従業員やお客様に感染症を広めてしまうことのないよう、対策を取りたいと思っています。会社に関する感染症に関する法律等について教えてください。

         

A、会社には、労働者が安全に、健康に働ける環境をつくる義務があります。一方で、労働者が感染症に罹患した場合の明確な対策や就業制限の期間などは一部の重篤な感染症を除き決まっていません。
感染症にかかった場合の出勤や給与の取扱いについて定めておくほか、感染症への罹患を予防するため、罹患した場合に広めないための対策などを従業員に周知しましょう。

 

解説(公開日:2019/05/13 更新日:2025/12/23)

 

感染症対策と会社の法的義務

会社には、労働安全衛生法の下で、従業員が安全・衛生に働ける職場環境を整える義務があります。これには、職場における感染症対策も含まれます。ただし、法的に一定の感染症について「就業制限が必ず必要」と規定されているのは一部の重篤な感染症に限られています。(※厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」等参照)

労働安全衛生法 第68条(病者の就業禁止)

事業者は、伝染性の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかつた労働者については、厚生労働省令で定めるところにより、その就業を禁止しなければならない。

感染症にかかった従業員がいる場合、感染症を蔓延させることのないよう対策を取る必要がありますが、法律に基づいて必ず対策を取らなければならない感染症と、それ以外の感染症では分けて考える必要があります。

 

法律により就業が制限される感染症とは?

● 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)

感染症法では、感染症を1~5類に分類し、種類によって就業制限等の行政措置が規定されています。

感染症の種類 法律上の就業制限 根拠法令 備考
エボラ出血熱等
(1類感染症)
あり(必須) 感染症法 飲食業は就業禁止
結核(2類感染症) あり(必須) 感染症法
労安法
接客・多数接触業務は制限
コレラ等(3類感染症) あり(必須) 感染症法 食品取扱業務は制限
新型インフルエンザ等 状況によりあり 感染症法 行政指示に従う
季節性インフルエンザ なし 就業制限は会社判断
ノロウイルス なし 就業制限は会社判断

就業制限については、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下、感染症法といいます)第18条第2項に規定されています。

対象となる感染症は、「一類感染症の患者及び二類感染症、三類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者又は無症状病原体保有者」です。

  • エボラ出血熱(1類感染症)・結核(2類感染症)・コレラ(3類感染症)➡就業制限の対象
  • 新型インフルエンザ等感染症➡流行時には就業制限の対象になることがある

ご質問にあった季節性のインフルエンザやノロウィルスについては、就業制限の対象となる感染症に該当しません。

就業制限の対象となるのは、エボラ出血熱(1類感染症)、結核・鳥インフルエンザ(2類感染症)、コレラ(3類感染症)などです。

これらの感染症にかかった場合には、「感染症を公衆にまん延させるおそれがある業務として感染症ごとに厚生労働省令で定める業務に、そのおそれがなくなるまでの期間として感染症ごとに厚生労働省令で定める期間従事してはならない。」こととされています。

 

飲食業における就業に関する感染症について

飲食業については、感染症法で定める「感染症を公衆にまん延させるおそれがある業務として感染症ごとに厚生労働省令で定める業務」に該当します。

観点 理由
食品を直接扱う 感染リスクが高い
不特定多数と接触 クレーム・風評リスク
衛生基準が厳しい 行政指導の可能性

「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則」(以下、感染症法施行規則といいます)第11条第2項に、感染症を公衆にまん延させるおそれがある業務について定められていますが、たとえば、エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、南米出血熱、マールブルグ病及びラッサ熱の就業制限の対象は、「飲食物の製造、販売、調製又は取扱いの際に飲食物に直接接触する業務及び他者の身体に直接接触する業務」であり、結核の就業制限の対象は、「接客業その他の多数の者に接触する業務」です。

 

飲食店として検討したい実務対応

出勤や給与の取り扱いについて、感染症に関するルールを就業規則に明記しておくと、トラブル防止につながります。

就業規則での取り扱い明確化
  • ・発熱・感染症の診断書提出の取り扱い
  • ・出勤制限・待機の指示基準
  • ・休業手当・有給休暇の取扱い
感染拡大防止策の周知
  • ・手洗い・手指消毒・換気・消毒の徹底
  • ・休みの取りやすい職場風土づくり
  • ・予防接種補助制度の導入検討(インフルエンザワクチンなど)

これらは法律で義務付けられているわけではありませんが、予防・感染拡大防止の実効性を高める労務管理策として推奨されています。

 

法律による就業制限の期間及び給与について

感染症法施行規則では就業制限の期間について「その病原体を保有しなくなるまでの期間又はその症状が消失するまでの期間」などと規定されているのみであり、明確な日数の基準はありません。法律による就業制限がかかる感染症は、致死率が高かったり、重症化しやすいものですので、出勤(外出)の判断を含めて医師の指示に従うこととなります。

法律で就業禁止とされている感染症にかかった場合の就業禁止については、会社の都合で休ませているのではないため、給与や休業手当の支払いは不要です。

 

法律による就業制限のない感染症について

従業員が、季節性のインフルエンザやノロウィルスなどにかかった場合については、法律上の就業制限がありません。

感染症の症状があることや、医師の診断によって、従業員が自主的に休みたいという場合には、有給休暇の取得にせよ、欠勤にせよ、給与上の問題は生じません。一方で、従業員本人に就業したいという意思があるにもかかわらず、会社が就業を禁止するときには会社都合の休業として、休業手当の支払いが求められることもありえます。給与の支払の必要性の有無等については、個別の事案ごとに諸事情を総合的に勘案して所轄の労働基準監督署が判断するものであるため、一律の取扱いを断言することはできません。感染症に罹患したにもかかわらず出勤を希望する従業員についての対応は、産業医等の意見を聴く等して、会社と従業員の間で、勤務時における感染予防策や勤務内容を決めて勤務させる、または、ご質問が飲食店に関するものであることを考慮すれば、従業員本人に、飲食物を取り扱う仕事であること、他の従業員やお客様に感染を蔓延させてはならないという業務上の必要性を説明し、一般的にウィルスを保有しなくなる期間まで有給休暇の取得をしてもらうよう協力を仰ぐなどが考えられます。

 

その他、インフルエンザやノロウィルスに関する対策について

話しが広がるようですが、日頃から、話しやすい・相談しやすい職場であること、休みが取りやすい職場であることが、感染症に関するリスク対策になります。体調が悪いときに「休みます」と言いづらい職場であると、インフルエンザ等に感染している方が無理して働いてしまい、結果として、感染症を広めてしまうということがありえます。「もしかしたら感染したかもしれない」、「少し具合が悪い」ぐらいのときにも、気軽に周りの人に相談できて、すぐに病院にかかれるような職場をめざしましょう。

インフルエンザについては、予防接種を受けることで、感染しづらくなったり、感染したときの重症化を防ぐことができますので、会社で補助を出して、従業員さんに予防接種を受けてもらうことも一案です。

また、ノロウィルス対策については、厚生労働省が学校、社会福祉施設等の調理施設に向けて発行している「大量調理施設衛生管理マニュアル」というもの記載があります。ぜひこちらのマニュアルを参考として衛生管理を行ってみてください。

 

【ご参考】「大量調理施設衛生管理マニュアル

 

弊社では、日常的なちょっとしたご相談へのお答えから、労務問題やコンプライアンス対策まで、幅広く承っています。お困りのことがありましたらお気軽に当グループ社会保険労務士までご相談ください。

       

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