2026/10/21
A、いよいよ来年4月1日、技能実習制度に代わり、新たに「育成就労制度」がスタートしますね。今回は、育成就労制度への移行にあたり最大の懸念点と事業者がおさえておきたい注意点と対策を解説していきます。
これまでの技能実習制度は、ご存知のとおり、開発途上国への技能移転を通じた国際貢献を目的としていました。
一方、育成就労制度は、人手不足分野における人材育成と人材確保を目的とし、原則3年間の就労を通じて、特定技能1号の水準に相当する人材の育成を目指す制度です。
外国人材を受け入れる企業にとっては、制度の見直しによって人材育成や権利保護の仕組みが整備される一方、採用から育成、定着までの取り組みを改めて考える必要があります。
特に注意したいのは、外国人材を採用できるかどうかだけでなく、採用した人材に「この会社で働き続けたい」と思ってもらえるかどうかが、企業の人材確保を左右する時代になるということです。
今回は、育成就労制度への移行に当たり、事業者が押さえておきたい懸念点と対策を解説します。
技能実習制度では、原則として、本人の希望だけで実習先を変更することは認められていませんでした。これに対し、育成就労制度では、一定の要件を満たす場合、本人の意向による転籍が認められます。転籍には、分野ごとに定められる一定の就労期間、技能・日本語能力に関する試験などの条件があり、無条件で自由に転職できるわけではありません。
それでも、外国人材が現在の職場に不満を感じた場合、条件を満たせば、より魅力的な職場へ移る選択肢を持つことになります。
ここで企業が懸念するのは、採用や教育に費用と時間をかけ、ようやく一人前に育った人材が転籍してしまうことではないでしょうか。特に、賃金や休日、労働時間、福利厚生、職場の人間関係などで他社との差がある場合、人材が流出するリスクは無視できません。ただし、転籍を防ぐために必要なのは、転籍を制限することではありません。外国人材が働き続けたいと思える職場をつくることです。
【企業が取り組むべき対策】
まず、自社の賃金や労働条件が地域の相場と比較して適切かを確認しましょう。加えて、仕事の習熟度や能力の向上が、昇給や役割の拡大につながる仕組みを整えることも重要です。
また、定期的な面談を通じて、本人の困りごとや将来の希望を把握し、問題が大きくなる前に対応できる体制を整えましょう。
外国人材の受け入れ企業から「地域の相場並みの給与を支払っているのに、なかなか定着しない」という声を聞くことがあります。確かに、賃金は重要な要素です。しかし、働き続けたいと思う理由は賃金だけではありません。
<例えば、次のような点も職場選びに影響します>
育成就労制度では、認定された育成就労計画に基づき、外国人材に必要な技能などを習得させることが求められます。しかし、日々の業務に追われる中小企業では、教育担当者が決まっていない、指導内容が人によって異なる、仕事を教える時間が確保できないといった問題が起こりがちです。こうした状態では、本人の成長が遅れるだけでなく、指導する側の負担も増え職場の不満につながる可能性があります。
【企業が取り組むべき対策】
入社後の教育計画を具体化し、段階的に習得する技能、指導担当者、習得状況の確認方法を決めておきましょう。例えば、入社直後は安全ルールや基本作業、次の段階では一人で行える業務、さらにその先では応用作業や後輩への指導など、成長段階に応じて目標を設定します。また、日本語教育も本人任せにせず、職場で使用する専門用語や安全に関する表現を学べる機会を設けることが重要です。育成を現場担当者の経験や善意だけに頼らず、会社として支える仕組みをつくることが、教育の質を高めるポイントです。
育成就労制度では、育成就労計画の認定、監理支援機関との関係、労働関係法令の遵守等、制度に応じた対応が必要になります。計画どおりに育成を実施していない場合や、出入国・労働関係法令に違反した場合などには、改善命令や育成就労計画の認定取消しにつながる可能性があります。従来の運用をそのまま継続すればよいと考えるのではなく、新制度に沿って自社の受け入れ体制を確認することが必要です。
【企業が取り組むべき対策】
自社が受け入れる予定の分野について、最新の制度概要、分野別運用方針、運用要領を確認しましょう。特に、対象業務、育成就労計画の内容、必要な技能・日本語能力の水準、転籍に関する要件、費用負担などは、制度の詳細を確認する必要があります。監理支援機関とも早い段階から情報を共有し、申請や受け入れ準備のスケジュールを確認しておくことが大切です。なお、2026年から施行日前の申請受付も段階的に始まっています。2027年4月以降の受け入れを予定している企業は、準備を先送りしないようにしましょう。
育成就労制度への移行は、外国人材の受け入れ手続きだけを見直せば終わるものではありません。これからは、採用した人材に長く活躍してもらうために、賃金、評価、教育、キャリア形成、職場環境を一体的に考えることが重要になります。例えば、仕事を覚えたら昇給する、資格を取得したら担当できる業務が広がる、一定の能力を身につけたら後輩の指導を任されるなど、成長と処遇の関係を明確にすることが考えられます。
こうした仕組みは外国人材だけを対象にするだけではありません。日本人社員も含め、全社員の努力や成長が適切に評価される職場づくりにつなげることができます。
また、制度上の要件を満たすことと、外国人材が安心して働ける職場をつくることは、分けて考えなければなりません。法令遵守を土台としながら、何よりも日々のコミュニケーションや相互理解を深める取り組みが欠かせません。
育成就労制度は、外国人材の権利保護を強化するとともに、人材育成と人材確保を目指す制度です。一方、本人の意向による転籍が一定の条件の下で認められることで、企業には、これまで以上に人材の定着に向けた努力が求められます。
大切なのは、制度への対応を最低限の義務として捉えるのではなく、外国人材が成長し、安心して働き続けられる職場をつくる機会と考えることです。「採用できる会社」から「選ばれ、働き続けてもらえる会社」へ。制度移行を目前に控えた今こそ、自社の賃金・評価制度、教育体制、職場環境を点検し、将来を見据えた人材確保の仕組みづくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。
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② 2026年09月30日(水) 10:00~11:00 |
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